• テキストサイズ

愛玩人形【気象系BL】

第11章 信愛…


名もないような花を、智子は両手いっぱいに摘んだ。

その半分をブラウスの襟元を飾っていた細いリボンで束ね、花束を作った。

「その残った花はどうするんだい?」

ふと智子がネッカチーフに包んだ花が気になる。

「ふふ、お花の冠を作って赤ちゃんへの贈り物にするのよ?」

「花の冠って、まだ男か女かも分からないのに…」

「あら、智子には分かるもの。きっと兄さまに似た、可愛らしい女の子よ」

「僕に…?」

そうよ、と無邪気に笑って腹を摩る智子は、期待に目を輝かせていた。

さっきまであんなに不安そうにしていたのに…

「きっと期待と不安がないまぜになっているんだろうな…。親になるとは、そういうものなんじゃないか? 俺には分からんが」

言われてみれば、僕もそうなのかもしれない。

僕だって、父親になることに、不安がないわけじゃないし、期待だってしている。

でもやっぱり今は…不安の方が勝っているんだろうな…。

「さあ、そろそろ行こうか? この分だと家に着いた頃には日が暮れてしまう」

一足先に馬車に乗り込んだ潤が、地べたに座り込んで花を摘み続ける僕達を呼んだ。

「それは大変だ。さあ、行こうか?」

僕は智子の手を引くと、腰を支えて馬車に乗り込んだ。

智子の手には、色とりどりの花で作られた花束が、しっかりと抱えられている。

「喜んで貰えると良いね?」

僕が言うと、智子がこくりと頷く。

「智子が心を込めて作ったんだ。きっと…」

「そうね、おばさまもおじさまも、きっと喜んでくださるわね?」

愛おしそうに花に顔を埋める智子が、僕は愛おしくて…

僕は潤が見ている前だということも忘れて、その頬に口付けた。
/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp