• テキストサイズ

愛玩人形【気象系BL】

第10章 傀儡…


ちりりと小さな痛みを感じて、僕は顔を顰めた。

それでも僕は握った手を緩めることはしなかった。

堕ちればいい、地獄へ…

そして智子の無垢な心と身体を穢した罰を受けるがいい…

その時は、父さん…
僕も一緒に逝くから…

決して許されることのない禁忌を犯した罰を、僕も一緒に受けるから…

僕は閉じていた瞼をかっと見開き、奥歯をぎりりと噛んだ。

その時、不意に僕の視界に、まるで雲がかかったような影が出来、ずしりとした重みが僕の上にのしかかった。

「父…様…? 父さ…!」

父様の手からペーパーナイフが滑り落ち、僕の耳の横でからりと音を立てた。

「あなたがいけないのよ…? あなたが私を愛してくれないから…。あなたが…」

僕に覆い被さるようにして倒れ込んだ父様の下から這い出て、声のした方に目を向ける。

母…様…?

血の気を失くした顔に薄く笑を浮かべ、ゆらりと立ち上がった母様の手は真っ赤に染まっていて、その手には同じように赤に染まった包丁が握られていた。

「母様っ…!」

僕は力を失くした父様の身体を上向かせると、その口元に手を翳した。

でも一向に息が触れることはなく…

「死んで…る…?」

良く見ると、元々は玉虫色だった筈の着物の胸の部分が、どす黒く染まっていて、そこから溢れた赤い液体が床をも赤黒く染めていた。

「なんてことをっ…」

潤が僕を押しのけて、手首、そして首筋に指を宛てがった。
/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp