• テキストサイズ

愛玩人形【気象系BL】

第10章 傀儡…


未だ泣き崩れたままの母様を横目に、僕と潤は階段を登り始めた。

「あなた達、どうするつもり…?」

背中にかけられた母様の声に、僕も、そして潤も階段の途中で足を止めた。

「大丈夫、智子はちゃんと助け出すから…」

僕は振り返ることなく答えると、残りの階段を一気に駆け上がった。

潤と無言で目配せをして、書斎のすぐ隣の部屋の扉を、音が立たないようにそっと開け、僕は足音を忍ばせながら窓辺へと向かった。

普段は客間としてしか使っていない部屋だから、当然窓には鍵がかかっていて、それを外そうとした指をかけると、手にびっしょりとかいた汗で滑ってしまう。

落ち着け…、落ち着くんだ…

何度も自分に言い聞かせ、漸く開いた窓から露台へと出た。

ふと下を見ると、何度も見てきた筈の景色が、真っ暗な闇に包まれていて…

そのまま飲み込まれてしまいそうな錯覚に陥る。

駄目だ…、こんな所で怯んでいては駄目だ…

俄に震え出した両足を鼓舞するかのように壁に背中を着け、父様の書斎の窓までにじり寄った。

そして僅かに光の漏れるカーテンの隙間から、書斎の中を覗き見た瞬間、

「ひっ…!」

僕は思わず息を飲み、慌てて口元を両手で覆った。

なんてこと…
まさか父様がこんな…

僕が幼い頃から尊敬して止まなかった父様が…


今は獣に見える…
/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp