• テキストサイズ

愛玩人形【気象系BL】

第9章 惑乱…


どうしてこの人はここまで…

智子を愛する気持ちは同じとはいっても、きっと僕と同じくらいに…いや、それ以上に胸を痛めているだろうに…

なのにどうして僕のために…

いや、考えるのはよそう。

今は智子をどうしたらこの手に取り戻せるか…それだけを考えよう。

「あの…、父様は僕のことを何も?」

考えてみれば、ここに来てからもう数カ月も経つのに、父様の追手がここを訪ねて来ないのは不自然だ。

「それなら、義母上の采配だろうな…。大方外国に漫遊旅行だとでも言っているんだろう…」

そうか、それなら納得が行く。

それに母様が言うことなら、あの父様だって疑ったりはしないだろうし…

でももし、父様が母様の嘘を信じているとしたら…

「では、父様は僕がここに…日本にいるとは思っていないのですね?」

「ああ、おそらくは…」

ならば…

僕の頭に一つの考えが浮かんだ。

「先生、僕にお力添えをお願い出来ますか? それと、出来れば母様にも…」

僕が漫遊旅行に出ていると信じ込んでいるのなら、きっと父様は僕を婚礼の儀式に呼ぶことはない筈だ。

上手くすれば、誰にも僕だと気付かれずに忍び込むことが出来るかもしれない。

「勿論だとも。智子さんに幸せになって貰たいからね…。それから…君にも…」

僕はごくりと息を飲むと、自分に言い聞かせるように大きく頷いた。
/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp