第9章 惑乱…
子供を諦める…
もし仮にそうなったとしても、智子と一緒にいられるのであれば、それでも僕は…
でも智子はどうだろう…
一度はその身に宿した命を、簡単に諦めることが出来るだろうか…
「あ、あの…、智子は…妊娠していることは…」
僕の問いかけに、潤はゆっくりと首を振ると、腕を掴んでいた僕の手をやんわりと解いた。
「恐らくはまだ…。だが時間の問題であることに違いはないだろうな。その内、お腹も出て来るだろうし…」
もし本当に智子が妊娠しているとしたら…丁度三ヶ月を過ぎた頃…
あと数ヶ月もすれば、見た目にも明らかになって行く筈だ。
そうなったら…
「その前に智子を…、父様に知れる前に…」
父様が智子に触れる前に…
「いい、勿論だ。本当に君がお腹の子の父親、ならばね?」
「それは…どういう意味ですか?」
最初に“僕の子”だと言ったのは、潤の方なのに…どうして今更…
「義父上、ということは考えられないかい?」
父様が…?
そんなことある筈がない。
だって智子は…紛れもなく処女だった。
それは僕がこの目で、この身体で確かめたことだから、間違いはない。
「僕の子です。間違いなく…」
それだけは自信を持って言えることだった。