• テキストサイズ

愛玩人形【気象系BL】

第8章 慕情…


「実は聞いてしまってね…。勿論偶然だったんだがね?」

潤は前置きをすると、少しだけ声を潜めた。

何せ安下宿だ…壁は薄い。
どこで誰が聞き耳を立てているか分からない。

「照さんと義母上が話しているのをね…」

「…なん…て…?」

「義母上は迷っておられたんだよ…俺と智子さんの結婚を…。表向きは賛成した振りをしてね…」

母様が…?

あれ程智子の婚礼を心待ちにして、準備に勤しんでいたのに…?

「義母上は案じておられたんだろうな…智子さんの行末を…」

「で、でも母様はいつだって智子に辛く当たってばかりで…」

智子の頬に一生消えない傷を残すような、酷い仕打ちをしたのに…?

僕は俄に信じられなくて、膝の上で握った拳を見つめたまま、何度も首を振った。

だって僕は、母様はずっと智子を憎んでいるとばかり思っていた。

父様が外の女に産ませた子だから、と…

その母様が、智子の行末を案じるなんてこと…信じられない。

「思うんだが…。義母上はもしかしたら、わざと智子さんに辛く当たっていたんではないかい?」

「そんな…。どうしてわざわざそんなことを…」

「分からないかい?」

全てを見透かしたように僕の顔を覗き込んだ潤の目には、薄らと涙のような物が浮かんでいるように見えた。
/ 263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp