第2章 初恋…
頬に宛がったハンカチをそっと剥がすと、傷が痛むのか、智子が眉を寄せた。
「痛むかい?」
まだ乾ききっていない傷口に息を吹きかけては、僕は頬にかかる智子の栗色の巻き髪を指で梳いた。
「少しだけ…。でも、智子平気よ? だからそんなに心配しないで?」
小首を傾げ、智子が血の気を失くした顔でふわりと笑う。
「僕のせいだ…。僕が…」
僕はベットの端に腰を掛けると、智子の血に染まったハンカチをギュッと握り締めた。
「兄さまのせいじゃないわ? 智子が悪い子だから、母さまはあんなに怒ってしまったんだわ…。きっとそうよ…」
ギッとベットが揺れ、ハンカチを握りしめた手に、智子の綺麗な手が重ねられると、背中に智子の体温を感じた。
瞬間、僕の心臓が激しく脈打ち始め、下腹部に小さな痛みが走った。
僕は一体どうしてしまったんだ…
こんなこと、許されないことなのに…
「さ、智子…?」
まるで頭の中に心臓があるみたいだ…
「ふふ、兄さまも智子と同じなのね?」
「えっ…?」
振り向いた僕の手を、智子が胸へと導く。
「ほら、智子の心臓の音、聞こえるでしょ?」
手のひらに感じる、絹のブラウス越しにも分かる智子の鼓動と、僅かに膨らみ始めた乳房の形…
下半身の痛みは弱まるどころか、増すばかりで…
僕は咄嗟に智子の胸から手を引き剥がすと、ベットから腰を上げた。