第8章 慕情…

沈黙が流れ、ただ時間岳が無情に過ぎて行った。

それでも僕の考えは未だ定まらないままで…

｢俺は一旦家に帰るが、お前はどうする？｣

聞かれたって僕にはここで以外に、行く宛てなんてあるわけがなく…

それに手持ちの金だって大した額じゃない。

｢暫くここにいてもいいだろうか…？｣

｢俺は別に構わないよ。ほとぼりが冷めるまでいればいいさ｣

｢…助かるよ｣

ほとぼりが冷めるまで…

果たしてそんな日が来るのだろうか…

母様の、あの逼迫して表情を思い出すだけで、不安が過ぎる。

でも今は母様を信じるしかない。

一人になった薄暗い部屋で、僕は布団を頭から被り、深い眠りに付いた。



それから数日の間、僕は部屋から一歩も出ることなく、まるで息を潜めるようにして時を過ごした。

その間、母様からの連絡は一切なく…

僕は寄せては返す不安の波に胸を押しつぶされそうになっていた。

智子はどうしているだろうか…
柔らかな頬を涙で濡らしてはいないだろうか…

会いたいよ、智子…
君のその小さな身体をこの腕に抱き締めたい。

智子のことを思うと、胸が張り裂けそうそうで…

気付けば、枕が涙で濡れていた。

そんな時だった。

部屋の扉を誰かが叩いた。