第8章 慕情…
二宮は黙って僕の話に耳を傾けた。
そして僕の話が全て終わると、両手を枕に、畳の上に身体を投げ出した。
「そうか…。お前が道ならぬ恋をしていることは、薄々気付いてはいたが…。妹だったとはな…」
大して驚いた様子も見せず、僕に向かって笑顔を見せ、僕に隣に寝転がるようにと、畳をトンと叩いた。
「辛かったな、お前も…」
「僕は別に…」
この気持ちが辛いなんて、一度だってなかった。
でも、日を追うごとに大きくなる智子への思いに、胸が苦しかったのは事実だ。
「それで…。お前はどうしたい?」
隣に身体を投げ出した僕を見ることなく、二宮が問い掛ける。
「どうしたい、って…。それは…」
智子と一緒にいたい…
こうしている間だって、僕の心の大半は智子で埋め尽くされてる。
叶うことなら…
「櫻井のことだ、いい加減な気持ちで情を交わしたとは思わない。でも、こうなることを予想はしていなかったのか?」
予想していなかったわけじゃない。
父様や母様に知れれば、咎められることは容易に想像は出来たし、そうなった時の心の準備だって、それなりにしてきたつもりだ。
でもまさか智子を置いて来ることになるなんて…
それもこんな形で…
僕は一体どうしたらいいんだ…