第7章 哀傷…
僕は自室に駆け戻ると、すぐ様下衣をずり下ろした。
そして痛さを増すばかりの膨らみに手を添えると、智子のあの小さな乳房の柔らかな感触を思いだしながら、無心で自慰に耽った。
「智…子…、ああ…、智子…っ…」
何度も愛しい人の名を呼びながら…
静かに開かれた扉の隙間から、智子が見ているのも気付かずに…
思いの丈を手の中に吐き出した僕は、汚れた部分を綺麗に拭き取ると、そこにまた下衣を纏った。
そして乱れた息を整えると、再び智子の部屋の扉を叩いた。
「智子、僕だよ? 入ってもいいかい?」
声をかけてそっと扉を開く。
すると真っ赤なドレスを纏い、窓辺に佇んでいた智子が、弾かれたように僕を振り返った。
そこにはついさっきまで見せていた、あの無垢な姿はどこにもなくて、ただただ妖艶さを纏った、娼婦のような女が立っていた。
「智…子…?」
名前を呼びながら歩み寄ると、智子はくすりと笑って、小さな肩を揺らした。
「と、どうしたんだい、そんな風に笑うなんて…」
智子らしくない。
「あら、ごめんなさい? 智子、あんまり驚いてしまって…」
「何が…だい…?」
「ふふ、だって兄さまったら…、智子の名前を呼びながら…、ふふふ…」
見られていた!
僕は最も恥ずかしい行為を、一番見られたくない智子に見られていたんだ。
僕は羞恥に赤く染まる顔を隠そうと、咄嗟に顔を俯かせた。