第7章 哀傷…
「ごめん…、智子、ごめん…」
僕はどうする事も出来ず、がたがたと震える智子の身体を両腕で掻き抱いた。
僕はなんてことを…
決して言ってはいけない一言を、智子に向かって言ってしまうなんて…
「どうか許しておくれ…。僕は…」
でも黙ってはいられなかったんだ。
父様には許しておきながら、僕を拒むなんて…
許せなかった。
僕の胸に顔を埋めた智子が、ふるふると首を振っては、腰まで伸びた長い巻き髪を揺らす。
「兄さまは…ご存知…なのね…? 智子が…智子が…」
僕のシャツを鷲掴みにし、しゃくり上げながら、智子が僕を見上げる。
その姿があまりにも憐れで…
僕は智子の濡れた頬を両手で包み込むと、震えて色を失くした唇にそっと自分のそれを重ねた。
「知ってるよ? でも僕は智子が好きだから…」
例え智子が普通の女の子じゃなかったとしても、僕は…僕だけは…
「だからそんなに震えないで? もう智子が嫌がるようなことはしないから…」
本当は触れたくて触れたくて堪らないのに…
出来ることなら このまま智子を僕だけの物にしてしまいたいのに…
「ごめ…なさい…、兄さま…。智子、兄さまが大好きよ…? 誰よりも…兄さまが…」
僕もだよ、智子…
今はその一言だけで、僕は満足だよ。
僕も智子のことが、誰よりも…