第7章 哀傷…
どうして…
ここまで許しておきながら、拒むなんて…
それではあまりにも酷ではないか…
僕は顔を上げると、智子の頬を濡らす雫を指で掬った。
「恥ずかしがらなくても良いんだよ?」
智子が羞恥心から拒んでいるのではないことは、僕にだって分かっている。
あれはそう…確か、潤の両親が挨拶に来た時だ。
あの時智子は、秘密を知ったら潤ですら智子を嫌いになる…、そう、言って泣いたことがある。
きっと不安なんだね?
僕が智子の秘密を知ってしまったら、僕に嫌われると…
でもね、智子…?
僕はもう知ってしまったんだよ?
君の身体に隠された秘密を…
「大丈夫だから…ね?」
僕は智子の手をやんわりと解き、再び下腹部へと手を滑らせた。
でも、
「いやっ…!」
智子のもう一方の手が空を切り、僕の頬を叩いた。
「あ…、ごめんなさい…、兄さま…ごめんなさい…」
咄嗟に頬を抑えた僕を見て激しく動揺したのか、智子が身体を起こし、僕の頬に手を伸ばす。
僕はその手を捉え、智子の小さな肩を押すと、その身体を再びベットへと沈めた。
「どうして! 父様には見せたのに、どうして僕には…」
腹立ち交じりに言ってしまってから、ハッとして僕は自分の口を手で抑えた。
でももう遅かった…
智子の見開いた目にはみるみる涙が浮かび、やがてその小さな身体はぶるぶると震え始めた。