第10章 常世の国 ※加州清光R18
平伏し手元をじっと見ながら待っていると、寝室の戸がスッと開く。
その瞬間、室内の空気が変わった。
ふわりと香る花の香り、深く嗅げばクラクラしてしまいそうだ。
甘くて、心地良くて、不思議な気分になってくる。
「へぇ、今度の主は若いって聞いてたけど……ホント、若いね」
凛とした声が、私を若いと言ったが、その声の主も若く感じた。
私と同じくらいか、少し上くらいだろうか。
付喪神というくらいだから、相当年上のはずなのに。
「ねぇ、顏見せてよ。そんなご丁寧に伏してなんかいなくていいから」
声の主はしゃがみこむと、私の顎に手をやるとクイっと持ち上げる。
顔を上げ、声の主と目が合った瞬間、私は思わず息を飲んでしまった。
「………っ」
私の前に訪れた刀剣男士は、赤い瞳の、それはそれは美しい神様だった。
刀剣男士はみんな、こんなにも美しいのかな。
彼の顔に見惚れながら、ぼんやりと思った。
ここでの生活は、きっと悪くないものだろう、と。