第10章 常世の国 ※加州清光R18
「こちらが審神者様の部屋です。後ほど近侍の者が参ります。部屋の奥にある寝室でしばしお待ちください」
それだけ言うと、こんのすけ達は部屋から出て行ってしまった。
本当は色々と聞きたかったが、そんな雰囲気ではなかったのだ。
「……しばしって、どのくらいだろう」
部屋を見回せば、棚にはたくさんの書物が並び、奥へと進めば、続き部屋があった。
続き部屋の戸を開ければ、そこには布団が敷かれていた。
なるほど、こちらが寝室で、手前は仕事部屋ということか。
「この戸は……あぁ、衣装部屋か。なんだ、普通の着物もあるじゃない」
こんのすけに渡されたこの真っ白な着物、これおを常時着用するものだと思ったが、どうやら違うらしい。
寝室に連なって衣装部屋があり、そこには簡素なものから豪奢な着物が並んでいた。
簡素なものでも、私には到底縁のないくらい立派な仕立てだ。
鏡台には美しい髪飾りが並び、化粧道具も揃っている。
現世では、家があまり裕福ではなかった。
特に、私は養子だ。
義母は私の叔母で、幼い頃に両親を亡くした私を引き取ってくれたのは嬉しかったが、彼らの娘とはずっと差別されて育ってきた。
だから、このような女性らしいものとは縁遠かった。
「ほんと、綺麗……」
飾られている綺麗な着物にそっと手を触れようとすると、障子が開く音が聞こえた。
もしかしたら、さっきこんのすけが言っていた近侍というのが来たのかもしれない。
ついに神様に会う。
そのことに心臓が早鐘を打つ。
私は慌てて寝室へと戻り、布団の前で跪いた。