第10章 常世の国 ※加州清光R18
常世には現世のものは持ってはいけない。
着ていた服も全て脱ぎ捨て、常世の門をくぐる。
門をくぐれば、本丸にいるといわれる管狐、こんのすけ達が出迎えていた。
「審神者様、こちらにお召し替えください」
こんのすけに渡されたのは、真っ白な着物。
真っ白なその着物は花嫁が着る白無垢のようだったが、私にとっては死装束に思えた。
何も言わずに黙々と着替えれば、こんのすけはこちらへと、私を本丸へと案内した。
長い廊下をひたすら進み、途中たくさんの部屋を通ったが、不思議なくらい静かだった。
神様である刀剣男士はどこにいるのだろう。
もし会っても、姿を見ないように伏せ目がちに歩いていたが、その必要はないくらい誰ともすれ違うことはなかった。
この本丸にはまだ、刀剣男士はいないのではないか。
そうも思ったが、聞いていた話と違ってしまう。
私が審神者となる本丸は、既に数多の刀剣男士が顕現していると聞いていた。
前任者のことは説明がなかったが、長く引き継がれてきたこの本丸は私で十二代目の審神者となるのだと。
なら、刀剣男士も多いに違いないはずなのだが。
あまりに静かすぎるこの本丸に、不安を感じずにはいられなかった。