第33章 沖田総司の脇差※一期一振R18夢
「止血したつもりでしたが、傷が開いてしまったようですね」
一期一振は布を外すと、そこには鋭い刀傷があった。
「結構深い傷……すごい痛そう。よく我慢出来たね」
「この程度、お気になさらずに……慣れていますから」
自嘲気味に笑う一期一振を横目に、塗り薬を手に取る。
「ちょっと染みるかも」
腕の傷に、恐る恐る塗り薬をちょん、とつけると、一期一振は一瞬、痛そうに顔を歪めたけれど、声ひとつあげず、痛みに耐えていた。
彼はいつも、こうして痛みに耐えてきたのだろうか。
そう思うと、胸が締め付けられるような気持ちになった。
「痛いよね」
「いいえ。この程度、痛くはありませんよ。弟達が傷付くくらいなら、安いものです」
「……そう」
一期一振は弟のためなら、何でもしてしまいそう。
誰かのために自分を犠牲にする。
そういうところ、前の主にどこか似ている。
そんな風に思ってしまった反面、それほど大事にされる彼の弟達が羨ましくも思えた。
「はい、終わり。どう?」
少し前のように、ひどい巻き方にならずに済んだのは、薬研藤四郎にこっそり指南してもらったおかげだろう。
包帯が巻かれた腕を見ると、一期一振は笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。こんなに見事に手当して頂けて、おかげで痛みが楽になりました」
「……よく、自分の傷の手当てしてたから。私も、負傷してたのを隠したくてさ」
けど、一期一振のように誰かのためにではなかった。
少し前までの私は、負傷してしまう自分の弱さがが恥ずかしくて、誰にも言えなかったのだ。
だから、こっそり薬研に応急処置に仕方を指南してもらった。
それがこんな風に役立てられたのは、正直嬉しい。