第33章 沖田総司の脇差※一期一振R18夢
一期一振の身体を押しながら、するりと中に入ると、後ろ手に障子を閉めた。
「一期一振と話がしたいの。二振りだけで……だめ?」
なんだか、すごく意味深な言い方になってしまった。
けど、言っていることは間違ってはいない。
「……っ!?霧雨さん……っ」
一期一振の声には相当な戸惑いと焦りが入り混じっていた。
そりゃ、そうだよね。
彼は私の身体を離そうと、私の両肩に触れる。
「ねぇ、一期一振。私、知ってるよ?一期一振が何を我慢してるのか」
「……っ!?」
一期一振は私より背が高いから、彼の顔を見上げながら話す。
あ、こんなに近くで彼と話すの、初めてかも。
「一期一振、我慢しないで?無理したら、だめだよ?」
「…………霧雨さん」
しばらく沈黙した後、一期一振は覚悟したような表情に変わる。
よかった。
もし手当するのを拒まれたらどうしようって、思ってたんだよね。
一期一振から離れると、持ってきた風呂敷を卓に置く。
そして、包みを開いて中から包帯と塗り薬を手に取った。
「さ、傷見せてくれる?応急処置するから」
「…………は、はい?」
さあ早くと手をこまねくと、一期一振は困惑した表情をする。
え?むしろ私が、「はい?」なんだけど。
「え?一期一振、さっきの出陣で怪我した……んだよね?」
「……え?ええ……はい」
なんだろう。
この、歯切れの悪い返事は。
「負傷したこと、誰かに知られたくないなら、夜に手入れ部屋に行けばいいよ。だから、応急処置だけするよ?」
「…………」
一期一振はごほんと咳払いをすると、ふうっとため息をつく。
そして上着を脱ぎ、袖を捲り上げた。
「すみません。確かにその……負傷しました」
一体、今の不可思議な態度はなんだったんだろう。
そう思ったが、一期一振に差し出された腕を見て、そんな考えは吹き飛んでしまった。
露わになった彼の左腕には布が何重にも巻かれていて、わずかに血が滲んでいた。