第33章 沖田総司の脇差※一期一振R18夢
一期一振の部屋の前まで、意外にも誰にも会わずに着くことができた。
けど、ここに来て今更、もう一つの可能性に気付いてしまった。
もしかしたら、部屋にいないかもしれない。
私達とすれ違った後、彼は手入れ部屋に向かったかもしれない。
むしろ、そうであってほしい。
少し緊張しながら、抱えている包みをギュッと握りしめた。
「一期一振、いる?」
障子越しに呼びかけると、少し間を置いた後、中から一期一振の声がかえってきた。
残念ながら彼は手入れ部屋に行かなかったようだ。
「霧雨さん?一体どうしたのですか?」
スッと障子が開くと、一期一振は戸惑った表情を浮かべていた。
その顔色は、少しだけ血の気が引いているようにも見えた。
「あの、話があって……」
あ!しまった!!
誰かに見られた時の無難な言い訳は考えていたけれど、一期一振に何と言って部屋に入れてもらうか、考えていなかった。
しかも、こうして部屋の前で話をしている今、誰かが来てしまうかもしれない。
周りを伺いながら、何て言えばいいのか焦っていると、一期一振はますます戸惑った表情になっていく。
「話、ですか?すみません、今少し立て込んでいますので……」
そう言って、一期一振は障子を閉めようとする。
「ま、待って……っ!」
こうなったら、強行突破いかない。
そっと彼の身体に手を伸ばすと、彼の胸元目掛けて身体を寄りかからせた。
勢いをつけ過ぎてしまうと、負傷している一期一振を突き飛ばしてしまうかもしれないから、限りなく優しく。
傍目から見たら、恋仲の男女がするような体勢かもしれない。
けど、一期一振ごと部屋の中に押し入るには、このやり方しかない。
たぶん。