第33章 沖田総司の脇差※一期一振R18夢
「あれ?一期一振じゃん、報告の帰り?」
「ええ、先程帰城したものですから」
向こう側から来たのは、一期一振だった。
短刀の名手と言われた粟田口吉光が打った太刀で、彼には短刀や脇差の弟が沢山いる。
練度が高い彼は第一部隊に配置されていたが、つい最近、第四部隊の隊長の任に着いてから以降、ずっと同じ部隊の隊長についている。
第四部隊は、練度の低い男士を育成するための部隊。
練度を早く上げるため、より経験の積める任務に付けられるよう、練度の高い男士が隊長に着く。
これまで第四部隊の隊長は、第一部隊の男士が交代でその任に着いていたが、第四部隊の男士が全て粟田口の短刀の子になったからなのだろうか。
彼は弟たちの練度が高くなるまで、責任を持って隊長を務め続けると、主に直訴したのだ。
それを聞いた時、びっくりした。
彼をよく知っている訳ではないけれど、見た目は物腰の柔らかそうで、穏やかそうに見えるのに、主に直訴するなんて、熱い部分もあるのだなと、正直驚いた。
「それで、今日の出陣はどうだったの?」
「ええ、弟達も出陣する度に強くなっていますからね。負傷することなく戻っていますよ」
「そっか、良かったね」
穏やかに微笑む一期一振に、なんだか不思議な気分がした。
既視感というか、違和感というか。
なんだろう、これ。
「加州さん達はこれから報告ですか?」
「そうだよ。今日の出陣、霧雨が誉をとったんだ。凄くない?」
「それはおめでとうございます。霧雨さん、頑張っていらっしゃいますからね」
一期一振は私と目を合わせると、ふんわりと笑った。
主に褒められるのも嬉しいけれど、こうして他の男士に褒められるのは、悪い気はしない。
「有難う、ございます」
なんだか気恥ずかしくて、顔が熱くなっていく気がした。