第31章 沖田総司の脇差※三日月宗近R18夢
風が気持ち良い。
規則的に吹く風が睫毛を揺らす感覚で、意識が夢から現へと戻っていく。
「お目覚めになりましたか」
「…………え?」
目を開けると、そこには小狐丸さんの顔。
夢に堕ちる前は、確かに三日月と抱き合っていたはずだったのに、何故。
「こ、小狐丸、さん?」
「はい、そうですよ」
何故か、小狐丸さんに膝枕された状態で、彼は扇子で私の顔を扇いでいた。
この状況、頭がついていけません。
「あの……三日月は?」
「三日月殿はつい先程、急な任務に呼ばれ、出陣なされました」
「そう、なんだ」
なんだか少し残念な気がした。
それはきっと、三日月といる時があまりにも心地良かったから。
「霧雨さん、傷がまだ痛みますか?」
少しシュンとしたせいで、傷が痛んだのかと思ったのだろう。
小狐丸さんは眉根を寄せながら小首を傾げる。
「いえ、痛くないです」
首を左右に振り、傷の様子を見ようと腕をあげると、綺麗に包帯が巻かれていた。
「三日月殿が手当てされたのですよ。慣れていないご様子でしたので、ほんの少しだけお手伝いはしましたが」
包帯もだが、着物もしっかり着付けられている。
身体を起こして周りをみれば、私の刀は、見事な細工がされている刀掛けに置かれていた。
「あの、着付けは小狐丸さんが?」
「それも、三日月殿ですよ。私がしたのは……」
すっと小狐丸さんの手が私の髪に触れる。
なんだろうかと思って触れてみると、髪の結い方がいつもと違っているのに気付いた。
「あれ……?」
それに、何か挿してある。
なんだろう。もしかして簪かな。
結われた髪を確かめるように触れていると、小狐丸さんが大きな鏡を持ってきてくれた。
そこに映ったのは、明らかにいつもと違う自分。
「とてもお似合いですよ」
「あ、ありがとうございます!」
私には、こんなに可愛く髪を結うことは出来ない。
簪だって、残念ながら持ってないし。
ふと鏡に映った簪に目が止まり、すっと抜いて手に取ってみた。