第31章 沖田総司の脇差※三日月宗近R18夢
トンボ玉のついた、綺麗な簪。
深い青色のトンボ玉に、砂金のようなものが散りばめられている。
まるで夜空に無数の星が浮かんでいるようだ。
「簪は三日月殿からです。さて、今から主さまに戦績報告に行けば、終わる頃には手入れ部屋も空くでしょう」
簪をまじまじと見ていると、小狐丸さんがすっと立ち上がる。
そして、刀掛けにあった私の刀を取ると、私の前に両手で差し出した。
「また遊びにいらして下さい。髪を結ってあげますよ」
「はい……」
刀を受け取り、腰に差す。
いつもより女の子らしい髪型だから、刀は似合わないかもしれないけれど。
なんだいつもより背筋がぴんとするような気持ちになった。
「可愛らしいお客様は大歓迎ですからね。次は美味しい茶菓子も振舞いますよ」
「本当に?また、来ますね」
三日月に簪のお礼もしたいし。
また来よう。
手に持っていた簪を髪に挿そうとしたら、小狐丸さんが髪に挿してくれた。
「いつでもどうぞ。私も、霧雨さんとゆっくりお話がしたいですから」
にっこりと小狐丸さんが微笑む。
その笑みが、なんだか熱っぽく感じてしまって、つい頬が赤くなってしまった。
「近いうちに、遊びにきます」
小狐丸さんに別れを告げ、来た道を戻っていく。
一歩、また一歩進む毎に大きな屋敷のような三日月達の部屋が遠のいていく。
主のいる部屋がある御殿は、長い渡り廊下をひたすら進んだ先。
その道のりの最中、私の頭の中は何やらふわふわした感じがしていた。
江戸時代に生きた刀とはまるで違う、平安時代から永く生きた刀。
住まいも、纏う空気すら違う。
あの屋敷での出来事は、実は全部夢だったんじゃないか。
そう思えるほど、不思議な感覚に満ちていた。
終