第31章 沖田総司の脇差※三日月宗近R18夢
慌てて袖を伸ばして腕を隠すと、三日月に向き直る。
腕の包帯、見られてしまっただろうか。
「三日月さん……か、急に話しかけてくるから、驚いちゃったよ」
崩れそうだった作り笑顔を何とか取り戻して、精一杯笑う。
彼とこんな風に話す機会は滅多に無い。
部隊が違う上に、部屋も離れている。
稽古場で彼を見かけることも無ければ、内番が一緒になることもない。
「そのような他人行儀ではなく三日月、で良い。して、何故そのような顔をしておるのだ?」
「か、顔……?別に、何でもないよ」
早く、ここから立ち去りたい。
けど、それが出来ないのは、何故だろう。
本当は、彼と話したかったから、だろうか。
滅多に会うことの無い三日月と、偶然に会った。
そのことが、少し嬉しかったのかもしれない。
けど、出来れば違う状況下で会いたかった。
「そうか?何か悩んでいるのではないかと思ったんだがなあ。このじじいで良ければ、話を聞くぞ?」
じじい、ねぇ。
確かに彼は何百年も前に生まれた刀だが、見た目は物凄く若い。
私より遥かに背も高く、練度も、ものすごく高い。
ちっとも稽古場で会わないというのに。
三日月はそっと近づいてくると、優雅な仕草で私の顎を掬いとる。
彼の藍色の瞳が、こんなにも近い。
瞳に浮かぶ、三日月のような金色の光が、すごく綺麗だ。
瞳だけじゃない。
三日月はその存在も、全てが本当に美しい。
「何でも?」
「ああ、亀の甲より年の功と言うだろう?時には年長者に頼ってみるのも、悪くはないと思うぞ?」
そう言って、微笑む三日月。
何か企んでいるわけではないのだろうが、彼が真実何を考えているかわからない。
けど、それが私の興味をよりそそった。