第29章 沖田総司の脇差 零章※へし切長谷部
長谷部に連れられたのは、こじんまりとした一室。
本棚には沢山の書物が並べられていて、他に見渡せば、刀が掛けてあった。
「俺の部屋だ。ここなら、誰も来ない」
ぱたんと障子が閉められ、室内には長谷部と私の二人きり。
すぐ目の前にいる長谷部の目を見れば、彼は熱っぽい視線を私に向けていた。
「確かめて……いいんだな?」
私が頷くと、長谷部の大きな手が、遠慮がちに私の体に触れる。
頰や首筋、肩と、彼の手は様々な場所を優しく撫でながら移動した。
優しく、壊れ物を扱うかのように。
人は刀を抜く時、柄をグッと強く握る。
刀を握る時は、命のやり取りをする時だから、強く、勢いよく握る。
だけど人の体になった今、こんなに優しく触れてもらえるんだ。
そう思ったら、すごく胸がどきどきしてしまう。
次はどう触るんだろう。
優しく?それとも荒々しく?
長谷部の顔を見上げると、彼はほんのり顔を赤くしていた。
長谷部は、私以外の女性に触れたことがあるのだろうか。
いや、ないかもしれない。
だって、私の胸を触ってもすぐにそれが乳房だって気付かなかったし。
「霧雨……?やはりこうされるのは嫌、なのか?」
長谷部の声にはっと我に返った。
長谷部の顔を見ながら、色々と考えてちゃってた。
気が付けば、袴の帯も、襦袢の紐までも解かれ、前の合わせは完全にはだけていた。
あとは、胸に巻いたサラシを解くだけ。
「霧雨が嫌なら、俺は何もしない」
あっという間に、ここまで脱がしておきながら。
そう思ったけど、長谷部なりに私を気遣ってくれてるんだろうな。
「ううん、嫌じゃない」
私は脇腹あたりに手を伸ばすと、サラシを解いていく。
サラシに納めていた乳房が解放され、体が少し楽になる。
ふうっとため息をついて長谷部を見ると、彼は私の胸元をじっと見ていた。