第29章 沖田総司の脇差 零章※へし切長谷部
「確認しておくがその……霧雨、お前……まさか、女……か?」
長谷部は、まだ私が女だということに確信が持てていないようだ。
まあ、嘘をつく必要なんてないし、こくりと頷いた。
「……はい」
「つまり刀剣男士、ではなく……刀剣女士なんだな?」
念を押すかのように、再度確認される。
しつこいなー、もう。
こっちは正直、それどころじゃないのに。
「そうだよ。わからない?」
もう、丁寧に話すのも煩わしい。
何故かはわからないけど、胸がどきどきしていた。
長谷部に胸を触られて、その時に感じた違和感。
さっき体に感じた不思議な感覚は、一体何なのか。
それがすごく気になって仕方ないのだ。
「わからないなら……もう一回、触って確かめてみる?」
長谷部の手を取ると、胸へと押し当てた。
彼の手が、ビクッと強張ったのがわかる。
その僅かな動きにすら、私の体は敏感に感じとってしまえる。
きっと、そう。
私、触れて欲しいんだ。
「いいよ。長谷部の気の済むまで、したいように……確かめて?」
ゴクリと長谷部が喉を鳴らしたのがわかった。
きっと、私と同じことを考えたのかもしれない。
そういうこと、知らないわけじゃない。
だって、かつての主達だってしてた。
確か……花街だったかな。
男と女が、体に触れ合う。
えっと確か、まぐわう?睦ごと?って言うんだっけ。
どうでもいいや、だってもう……。
「ほら……長谷部、早く……確かめてみてよ」
触って欲しくて、堪らない。
今だって、長谷部の手を押し当てているところから、くすぐったいような、ぞくぞくとするような。
初めて感じる気持ちいいものが体に伝わっていく。
もっと、この感覚を味わいたい。
「霧雨……っ!」
私の望むことを汲み取ってくれたのか、長谷部は何かを決意したかのように、彼の瞳に熱っぽいものが浮かぶ。
そして、私の腕を掴むと、そのまま廊下を勢いよく引き連れて行った。