第23章 憧れの先生※一期一振R18
「それじゃ、桜……前に出てこの問題解いて」
「…………え?」
なんで、私なんだろう。
やっぱり、教科書開いてすらいなかったのバレバレだったのかな。
黒板をじっと見れば、そこには見たことのある問題が書いてあった。
あれ、昨日予習したところだ。
よかった。
ノートを片手に、前に行こうとすると、一期先生がにっこりと微笑んだ。
その笑顔に、心臓がドキドキと早鐘を打つ。
顔も熱くなってる気がする。
先生はきっと、ただ微笑んでるだけなのに。
私の邪な考えのせいで、その笑顔を意味深に感じてしまう。
ドキドキしながら先生の隣に立つと、ふっとひと呼吸してチョークを手に取った。
「…………」
邪な考えのせいか、横からの先生の視線、より痛いほど感じるのですけど。
顔赤くなってるの、変に思われているのかな。
早く、席に戻りたい。
「で……できました」
急いで問題を解くと、そそくさと逃げるように席に戻る。
「うん、正解。ちゃんと予習して偉いね」
私が席に着くと、先生は満遍の笑みでそう言った。
やった。褒められた。
嬉しさで心が跳ねた瞬間、つい頭に浮かんでしまった。
『正解したらご褒美をあげますよ』
その言葉通り、先生は涼しげに微笑むと私の頰に手を添えて、お互いの唇が重なった。
触れるだけのキスじゃなくて、唇を喰まれては、先生の温かい舌が唇をなぞる。
それは、私が昨日すごくドキドキした小説のワンシーン。
「……っ!」
うわっ、わー、うわー!
今思い出すのはダメだ!!
周りに変に思われないよう、何気無く頰に手を当てると、思った以上に熱かった。
これだけ熱いのなら、相当真っ赤な顔になっているに違いない。
私の席から、一期先生がいる教卓まで距離はあるけど。
こんな顔、先生に見えているのかな。
恥ずかしい。
授業に集中しなきゃならないのに、ちっとも集中出来ない。
早く、授業を終われ。
そんな風に思ったのは、この日が初めてだった。