第23章 憧れの先生※一期一振R18
「そうでしたか、休日なのに勉強のためにここまで来るとは……偉いですね」
「…………」
一期先生の言葉に、私は苦笑いするしかなかった。
先生、ごめんなさい。
真実は違うのです。
「せ、先生は……どうしてここに?」
「私ですか?私はこの近くに住んでいるのですよ。だから、今日は趣味の本を買いに来ていました」
一期先生、この近くに住んでいるんだ。
知らなかった。
そういえば、一期先生も私服だ。
「そう、なんですね……」
新しい一期先生情報と、初めて先生の私服を見れたのは素直に嬉しい。
けど、もうこの本屋で小説を買うのはやめておいた方が良さそうだ。
「桜、この後はどうするのですか?
「えっと、家に帰ります。明日の予習をまだしていないので……」
出来れば、速やかにここから立ち去りたい。
予習をしていないのは事実だけど、この小説を持ったまま一期先生と一緒にいるのは、とてつもなく心臓に悪い。
「そうですか、感心なことです。駅まで送りましょうか?」
うっ、一期先生の笑顔が眩しいです。
それに、駅まで送ってくれるってさ、王子様みたいじゃん。
けど。
「いえっ!お気持ちだけで充分です!それじゃあこの辺で!失礼しますっ!」
一期先生に一礼すると、一目散に駆け出した。
たぶん、確実に変な生徒だと思われたに違いない。
それでも、一刻も早く先生と離れたかった。
何かの拍子に「買った問題集見せて下さい」とか、「買った問題集を使ってこれから勉強見てあげましょうか?」とか言われるかもしれないじゃない。
…………妄想が過ぎるかもしれないけど。
駅まで全速力で走り、電車に乗ると、私の心臓は相変わらず早鐘を打ったままだった。