第17章 保健室の先生※加州清光R18
忘れたことなど、ない。
初めて見掛けた頃から。
そして、あの日からもずっと。
「ねぇ、こっち見て」
彼が頰に手を添え、優しく撫でる。
思わず顔を上げると、彼の赤い瞳と目が合った。
正面から彼を見るのは、初めてだ。
人形のように滑らかな白い肌、綺麗な黒髪。
完璧というのは、彼のためにある言葉だと思う。
その彼が今、自分を見つめている。
恥ずかしさで胸が、体が熱くなっていくのがわかる。
「……俺が怖い?」
「わからない……です」
それは事実だ。
わからない。
会えて嬉しいのか、怖いのか。
「桜は俺に、聞きたいことある?」
「…………」
何もないと言えば、嘘になる。
実際、彼に聞きたいことはたくさんある。
「……どうして」
どうして、私にあんなことしたの。
どうして、あの日から見掛けなくなったの。
どうして。
「ここに……いるの?」
「え?知ってて来たんじゃないの?俺はここの養護教諭、この春からね」
噂のイケメンは、彼のことだったのか。
「先生……なんだ」
「そうだよ。だって……君に、桜に会いたかったから」
先生は私の腕を引き寄せると、ぎゅっと強く彼の腕の中に閉じ込めた。