第17章 保健室の先生※加州清光R18
「そう、じゃあ熱測ってみようか。熱がないなら、教室に戻ろうね」
あれ?普通の反応。
確かに目が合ったのに。
彼の反応に、残念がっている自分がいた。
私だけドキドキして、馬鹿みたいだ。
「熱はないと思います。なので、もう教室に戻ります」
ベッド脇に置いていたブレザーを羽織ると、急いでドアへと進む。
一刻も早く、ここから立ち去りたい。
そう思ってドアを開けようとしたら、バンっと扉に手をつかれた。
突然の事に、驚きで肩がびくりとなる。
「……あの」
「顔、赤いよ?もう少し休んで行けば?」
ドアに伸ばしていた手に彼の手が重ねられ、キュッと握りしめられる。
「だ、大丈夫ですから、もう……」
声が掠れて、上手く喋れない。
すぐ後ろに彼がいる。あの日と同じように。
「俺のこと……忘れちゃった?」
彼は私の肩に手を置くと、グッと後ろに引き寄せ、耳元で囁く。
その言葉に、思わず振り返ってしまった。
「あ……っ」
すぐ目の前に彼の顔があって、こんなにも近い。
いつも同じ電車に乗っていたけれど、こんなに近く、向き合うことはなかった。
あの日だって。