第17章 保健室の先生※加州清光R18
「ん……」
どのくらい眠っていたのだろう。
何時限めかわからない始業ベルの音で、ふと目が覚めた。
すると、ベッドのカーテンが少し開いており、その隙間から人影が見えた。
机に座り、かりかりと音を立てて何かの書類を書いている。
おそらく、養護教諭の先生だろう。
そういえば、この春に新しく転任してきたって聞いた。
すごく格好いいと、クラスメイトが噂していたから、ほんの少しだけ気になってはいたのだ。
ぼんやりとした頭で、先生の顔を見ると、その横顔に見覚えがあった。
「っ!?」
見間違い、だろうか。
隙間から食い入るように相手を見ると、それは確信へと変わる。
人形のような白い肌と、艶のある黒髪。
そして、鮮やかな紅いマニキュア。
電車の彼だ。
何故、彼がここにいるのだろう。
おかげで、出るに出れなくなってしまった。
どうすべきが考えていると、ふと彼の手が止まる。
まさか。
「…………」
もしかしたら、私の様子を見に来るかもしれない。
慌ててカーテンから離れると、ベッドに潜り込み、頭から布団をかぶる。
こっちに来ませんように。そう願った。
ギシッと無機質な音を立てて彼が椅子から立ち上がる。
どうか、こっちに来ませんように。
何度も、とにかくそう願うしかない。