第17章 保健室の先生※加州清光R18
あれは、秋のことだった。
毎朝同じ電車で見かけていた、憧れの彼。
その彼に、恥ずかしいところを触れられた。
彼は、また明日と言ったけれど、その日から彼に会うことはなかった。
あの日まで、毎日同じ電車だったのに。
あの日を境に、ぱったりと見掛けなくなってしまった。
あの日の出来事も。彼の存在も夢だったのではないか。
そう思いはじめたのは、季節が変わった、春のことだった。
新学期となり、桜もとうに散った頃。
新しいクラスや友人にも慣れたけど、この痛みには慣れそうにない。
原因不明の頭痛。
寝不足なのか、気圧のせいなのか、目が悪いせいなのか。
よくわからないけれど、定期的に痛む私の頭。
おかげで、頭痛薬が手放せない。
しかも、今日はこれまでで一番痛い。
授業に出ないのは気がひけるが、今回は仕方がない。
諦めて、保健室に行くことにした。
「失礼します」
痛む頭を押さえながら保健室に入ると、誰もいなかった。
私以外の生徒も、先生も。
仕方なく、ポケットから頭痛薬を取り出すと、ウォーターサーバーから水を汲んで薬を飲んだ。
「……はぁ」
薬を飲んで、しばらく寝ていれば治る。
保健室の利用名簿に、クラスと名前を書くと、ベッドに横になった。