第12章 闇の豪邸
適当に歩いてはドアを開けていたダンテは、手頃なベッドがある部屋を見つけるとそこに入った。
剣も双銃もすぐそばに置き、ベッドに腰を下ろす。
ベッドは綺麗ではなかったが汚くもなく、寝るのには困らない程度だ。
少なくとも、あの依頼人が用意したものよりよほど上等に思えた。
───ったく。あの女は……
息をついて、がしがしと髪をかく。
もうこんな所にいたくなかった。雑魚悪魔も退治したのだから、ここにいる理由がない。
正直投げ出したかったが、相手は依頼人。更にの事もある。
はこの間にも、家で不安に…。
───いや…
が寂しそうにしているのを、バージルが放っておくはずがない。
なぐさめていたり…するのだろうか。
そう思った途端、ダンテは急に不安になった。
に会いたい。今何をしている?
バージルと二人でいるのか?
毎回。
毎回仕事がある度に。
その度に毎回こんな思いをするのは嫌だと、バージルに愚痴を…
───カタン…
入口から物音がして、ダンテははっと顔を上げた。
一瞬だろうかと期待したが、そこにいたのは依頼人の女。
あからさまに、自分でも驚くほど落胆する。ダンテはふいっと顔を背けた。
「何の用だ?」
「…………」
女は無言。
静かにダンテに近寄り、目の前に立った。
仕方なく、ダンテは女を見る。
「何だ」
「…綺麗な髪……」
女はダンテの髪をすく。
ダンテは動かなかったが、わずかに女を睨みつけた。
嫌悪を堪え拳を握りしめる。
「気安く触るんじゃねえよ」
「綺麗な瞳……」
女はダンテの言葉が聴こえていないように、うっとりとダンテの頬に手を滑らせた。
その指先は繊細で、強くもなく弱くもなくダンテの肌を圧し滑り。
前はその感触に心が震えたものだったが、今はまるで何も感じない。
「聞こえなかったのか。気安く触るなって言ってんだ」
自然ぶっきらぼうになる口調。
今俺が欲しいのはあんたじゃない。ハッキリ言わないとわかんねぇか。