第12章 闇の豪邸
バージルは走っていた。
あの依頼人から悪魔がいる場所は聞いていないが、話の中で大体の当たりをつけている。
それが当たっている事を祈り、その場所へ急ぐ。
未だ頭の中では整理がつかず、いくら考えても何もわからなかった。
しかし、彼女がこんなことをするはずがない。それだけは信じていた。
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ドシャッ、と崩れ倒れる音。
ダンテは砂と化した悪魔を面倒くさそうに見遣ると、更に面倒くさそうに振り向いた。
入口で、女が立っている。
「どうせ俺を呼ぶなら、もっとマシなヤツ用意しといて欲しいね。この程度じゃ散歩帰りにでも倒せるぜ」
剣を背中に収める。銃はまだ一度も出していない。
この分じゃ用ナシだな。
女───依頼人は、ダンテの言葉にわざとらしく笑った。
「それはごめんなさいね。私たち一般人にとっては、悪魔は平等に恐ろしいものだから。強さなんて関係ないのよ」
───平等、ね…
陳腐な台詞だ。
悪魔のいなくなった部屋に留まる理由はない。ダンテは女のいる入り口に歩み寄る。
依頼人はダンテを見ながら、それはそれは楽しそうに嬉しそうに微笑んだ。
「さあ。もう夜よ」
ダンテはそれを無視して、女の横を通る。
「俺が泊まる部屋はどこだ」
依頼人はうっすらと微笑んだまま、無言でダンテの先を歩き出した。
ダンテも遅れてついていく。
そうして案内された部屋は。
「ここよ」
入った途端に目につく大きなベッド。そう、ちょうど二人用の大きさの。
ダンテは眉を思いっきりしかめた。いい加減うんざりだ。
振り返ると、女は笑っている。
「俺が泊まる部屋はどこだ」
「ここよ」
「お前の部屋は」
「ここよ」
───やっぱりな。
まあわかっていた事なので驚きはしないが。
全くやんなるぜ。わかりやすく拒絶してるはずなんだけどな。
ダンテはくるりと向きを変えると、別の方へ歩き出した。
「どこに行くの?」
「別の部屋で泊まる」