第1章 終わらない帰り道
その彼が、悪魔を蹴り飛ばして砂に還った事を確認すると、こちらを向いた。
瞳がを捕らえる。一瞬で心臓が跳ねる。
どこに視線をおけばいいのかわからなくて、は困ったようにうつむいた。
───お礼、言わなきゃ…
ダンテは座りこんでいるの目の前までくると、ぴたりと立ち止まった。
はうつむいたまま手を握る。
ちらりと見上げると、いぶかしそうに首を傾げたそれはそれは端正な顔が垣間見えて。
───無理無理無理! 直視できないよ!
そう思いぱっとまたうつむくが、ダンテの方がをじっと見ていた。
───近くで見るとやっぱりかわいいじゃねえか。どこの奴だ? ここに来たばっかだよな。今まで見た事ねーもん。見てたら俺がどうにかしてる。
恐怖も垣間見えるが、初々しく頬を染めてうつむく彼女。この辺りでは滅多に見かけない類の女だ。
ラブ・プラネットにいるのは皆、男慣れした女ばかり。ゆえにダンテは新鮮さを感じていた。
一方の方は、話せる人に会えた事に安心を覚えつつもずっと見つめられている事に焦りを感じていた。
───どうしようっ! 何でずっと見られて…
はっ! もしや私不審者だと思われてる!? 服だって濡れてるしっ
いやいやその前に助けてくれたお礼言わなきゃ…ああでも不審者だと思われてるならまず誤解を…。
そんな事をぐるぐると考えていたは、彼が
「おい」
と言ったと同時に、とっさに顔を上げ、
「違います! 怪しい者じゃないんです!」
そう口走った。
の脳内は、どうやら誤解を解く方を先にとったらしい。
彼はそれに驚いたようにちょっと眉を上げた。
頭の中で何を考えていたのかわからないが、聞きたい事とは斜め上の返答。それに考えてみれば、見ず知らずの人を助けておいて、怪しいも何もない。
さっき襲ってきた得体の知れない何かと仲間だと思われていたら嫌だとは思っていたが、仲間なら襲われたりはしないのだ。
は完全に混乱していた。