第11章 黒髪の誘い
「───…」
ライアが息を飲むのがわかった。
は思わず、ライアを抱き締めていた。
死に直面し続けた人生。次々と負けて亡くなり続ける家族。
その中にいて、たった一人で今まで生きてきて、心細くなかったはずはない。辛く苦しくなかったはずはない。
彼ではない自分が、その苦しみを到底理解できるはずはないとわかっているけれど。
それでも彼が今こうして生きている事が。
生きようと足掻いている事が。
「がんばったね…」
ライアは抱き締め返して来なかったが、嫌がりもせずじっとしていた。
黒いローブごしに伝わる体温。
彼が、ちゃんとここに生きている証。
「───何度でも申し上げます」
ライアが静かに、厳かに口を開く。
「私は、貴方に来て頂きたい。貴方でなくては…もう、貴方しかいないのです」
「───うん」
は目を閉じた。
そうすれば、ライアの気持ちが伝わるような気がして。
「私は何をすればいいの?」
静かに問う。
彼に何かしてやりたかった。そうでなければ、あまりにも報われない。
「…生涯を共にすれば永遠の幸福が得られます。だけど私はもう、そんなものはいらない。せめて、様共に寝所を…力を分けて…」
「寝所…?」
「はい」
───寝るって…
かすめる不安。寝る、という単純な言葉の意味に戸惑う。
どちらの「寝る」? まさかあっちの意味じゃないよね…。
まだライアとは会ったばかりなのだ。そこまで要求する間柄ではない。もしそうなら、言ってくれるはずだと。
は信じた。
「わかった。一緒に寝よう」
割と簡単に返事をしてきたに、ライアが驚くのも無理はなかった。
「本当……に……?」
いいのか。
見た限り、とダンテは恋仲だろう。なのに…
「うん、いいよ」
はにっこりと笑い返事をする。
大丈夫。