第11章 黒髪の誘い
は部屋に入ると、重たい足取りでベッドに向かった。
ドサッと倒れ込む。
───ダンテ……
自分で送り出したというのに、後悔ばかりが渦巻くのはなぜだろうか。は顔を少し動かして、横に向けた。
仕事だから割りきれるかと思っていたが、無理そうだ。
悪魔退治だけで一日いないのと、女の人と悪魔退治で一日いないのとでは全く違う。
不安で潰れそうになる。
だからといって、引き留めても後悔は残る気がした。
こういうのは嫌だ。どちらも選びたくないのに、どちらか選ばなくてはならない。
はぎゅっと目をつぶった。不安を振り払うように。
脳裏では後悔不安羨望嫉妬がぐちゃぐちゃに入り乱れていて、嫌な事を考えそうで怖い。
布団に顔を押し付ける。
───早く帰って来ないかな…
思って。想って。
はそのまま、眠ってしまった。
──────────
「…………」
───……?
「………ま…」
───何?
は誰かに肩を揺さぶられ、名前を呼ばれたような気がした。
次第にそれは実感に変わり、意識がはっきりしてくる。
ぼんやりとした頭で眠たい目をかすかに開けた。
───誰だろう…勝手に部屋に入るなんて。そんな事するのは…
そう思って、次の瞬間はっとした
「ダンテ!?」
がばっと起き上がる。
しかし、そこにいたのは。
「………あ…」
黒い髪に、金の瞳の。
「……ラ…っ!!」