第10章 依頼人
二人手を繋いで、リビングへ向かう。
リビングではもうバージルと依頼人がソファで向かい合っていて、依頼内容について話をしていた。
依頼人は降りてきたダンテを見て、ふわっと艶やかに笑う。
「あなたが、ここの店主さん?」
「あぁ」
依頼人は更ににっこりと微笑んだ。
「兄弟そろって素敵な方ね。気に入ったわ。依頼をしてあげる」
その言葉を機に、ダンテとバージル、依頼人とで話を始める。
はもちろんその中に入れない。
戦えない為当たり前の事だったが、やはり疎外感を感じて仕方がなかった。
3人と、ガラスを隔てて別の世界にいるようだ。
依頼人の話は、屋敷に棲みついてしまった悪魔の退治をしてほしいというものだった。
着々と話を進めている。ダンテとバージルは長い間悪魔退治の仕事をしているのか、話の聞き方も無駄がなく上手い。
依頼人は言った。
「その屋敷私の別荘なので、私にしか開けられないところがほとんどなの。悪魔の数も多いから、泊まりの準備もしてくださる?」
「泊まりだ?」
ダンテは片眉を跳ね上げた。
「んなもんしなくていいだろ。10分で片付けてやるぜ」
「まあ。それは頼もしいお言葉だけど…私が、貴方と一晩泊まってみたいのよ」
ぴくりと反応する。
やや不機嫌そうに、依頼人を睨み付けた。
「…どういう意味だ」
「そういう意味よ」
それはそれは魅力的に微笑みながら、依頼人はさらりと言ってのける。
そういう意味だという事は、やはりそういう事になるわけで。
今までにこういう事は何度かあったが、今回ばかりは死んでも嫌だった。
ダンテは眉をしかめる。
「御免だな。他を当たってくれよ」
「一晩でいいのよ。泊まって頂けるなら、報酬は2倍払います」
「………」
呆れて声も出ない。バージルも、冷めた顔で依頼人を見ていた。
しかし当の依頼人は、そんな事には気付いていないとでもいうように微笑んでいる。
そしては…
───泊まるくらいややこしい悪魔なのかな…。泊まっていけばいいのに。
などと的外れな事を思っていた。