第9章 留守番
「じゃあ、行ってくるな。すぐ終らせて帰ってくっから」
愛用の剣と双銃を持ったダンテは、扉の外にまで見送りに来たに言った。
「はい。怪我しないよう、気をつけてくださいね」
「あぁ。ま、もし怪我してもが手当てしてくれるから、安心だな」
そう言われたは、嬉しそうに照れる。
「任せてください。けどやっぱり、なるべく怪我はしないでくださいね。ダンテが痛い思いするの、嫌ですから…」
「わかってる。俺だっての辛そうな顔見るの嫌だからな。……じゃあ、行って来る」
ダンテは、に軽く唇を重ねる。ちゃんと帰って来ると、伝えるように。
は微笑むと、赤いコートを翻したダンテに言った。
「…行ってらっしゃい」
───────────
はせっせと掃除をしていた。それはもう忙しそうに、懸命に。
───今頃ダンテ、悪魔と戦ってるのかな…。
怪我、してないかな。
ダンテの事を信じてはいるが、やはり不安になる。そして寂しくも。
ダンテは命がけで戦っているというのに、早く帰って来て欲しいと思ってしまう。
その寂しさを紛らわすように、バージルの手伝いを断って掃除と整理をしていた。
───カタン…
物音がする度、はっとして入り口を見る。
そして、誰もいない入り口を寂しそうに見つめ、また掃除を続ける。
その繰り返しだった。
「ふぅ…」
は、額にうっすらと浮かんだ汗を手でぬぐった。
今、ようやくリビングとキッチンと風呂場の掃除を終えたところだ。
───ダンテ…遅いな…。
あれから5時間ほど経っていた。
いつも仕事にどのくらいの時間をかけるのかはわからなかったが、にとっては十分長く感じていた。
リビングに戻ると座って一休みする。
───早くって…どのくらいだろ。
もしかして、何かに巻き込まれた?
そう考えての頭に浮かんだのは、黒髪に金の瞳のライア。
諦めないだろうとダンテが言っていた彼。その瞳は、ダンテを睨んでいたような。
───ううん! ダメ、ちゃんとダンテを信じなきゃ。早く帰ると言ったんだから、その言葉を信じよう。