第9章 留守番
「片付けねぇ…」
「はい。ここには来たばっかりでまだまだ何がどこにあるのかわからないので、それを知るのも兼ねて…」
「…あー……どうしよ」
ダンテはなぜだか妙に複雑な顔をしていた。
───掃除、しちゃいけないのかな…。
見られたらまずいものとか、あるんだろうか。
そうが考えていると、ダンテはフォークを口に入れながら嫌そうな顔をして言った。
「俺今日、仕事あんだよ。…でもを連れてくわけにゃいかねぇし、だからといってバージルと二人留守番させるわけにも…」
「何だ、そんな事?」
は拍子抜けした。もっと深い理由かと思ったのだ。
「お留守番なら任せてくださいよ。ダンテは安心してお仕事行ってきてください!
大丈夫です。何かあってもバージルがいますから」
自信たっぷりに言う。
それはありがたい。大変ありがたいのだが。
───だからそのバージルが一番安心ならねえんだよ!
…とは、ダンテは言えない。
バージルは、普段なら目付きが悪いくせして世話焼きなのだが、ああ見えて強引だ。
頼み事なんかがあると、有無を言わさず自分の意見を押し通す。
ダンテはバージル以上の強引さで彼をあしらっていたが、いかにも押しに弱そうなであれば…
───間違いなく、負けるだろうな。
それが怖い。
義理堅く、卑怯な事は絶対にしないバージルの事だ。人の女を取りはしないだろうが…今までに、二人いっぺんに同じ人を好きになるという事がなかったので、はっきりとは言い切れない。
───…どうしたもんかねぇ…
知らずに難しい顔をして考え込む。
───そういえば俺が起きた時、妙に不安そうな顔してたな。
不意に、今朝のの表情を思い出した。
は隠してるようだったが、ダンテにはすぐにわかっていた。
一時目をそらしただけでの気持ちに気付けなくなるのは嫌だ。だから、いつもを見ている。
一瞬の変化も逃さないように。
───でも、だからと言って仕事断るってのもなぁ…
住人が3人に増えた今、食料やら何やらとにかく金がいる。
…行くしかねぇよな。