第9章 留守番
は赤い顔でダンテを見た。
「…っ じゃあ今ので目覚めましたよね!」
「あぁ。明日もよろしくな」
はぷうっとふくれてダンテを見た。
ダンテはいつも意地悪をする。あんなキス、私ができるわけないよ! やり方もわからないのに…
ダンテは何で、あんなのができるんだろ…
……あ。
他の女の人にやった、から…? そうじゃなきゃ、ああも上手くできない。
ダンテが、私じゃない他の人に…
一気に気分が重くなったのがわかった。
気付かなければよかったと思ったが、遅い。
は口付けは初めてだったが、ダンテはよりも大人で、しかもものすごく格好いい。
放って置かれるわけがないのだ。
もしダンテに興味がなくても、この容姿では相手の方からやって来るだろう。
他の人に、ダンテが…
不意に燃え上がる嫉妬。暗いどす黒い。
「あ? どした?」
いきなり止まったに、ダンテが声をかけてくる。
「な、何でもないです!」
今の顔を見られたくなくて、覗き込んできたダンテから慌てて顔をそらす。
───やだ。こんな事気にしてどうすんの。
ダンテは大人で私は子供。ダンテにそういう経験があるくらい、当たり前。
『大人と子供』
自分で思ったその言葉が、何だか壁のように立ち塞がった気がした。
しかしそれを悟られまいと、は明るい声を出す。
「ほらっ 早く下行きますよ!」
一人すたすた歩いて行く。
今、ダンテの顔を見る勇気がなかった。
一階で朝食を食べる3人。
は、少しするとさっきの気持ちが気にならなくなっていくのを感じていた。
一旦気付いたからには心に残っているが、ダンテの顔は見られる。
「今日は何すんだ?」
だから、ダンテがそう尋ねてきた時もちゃんと顔を見て答えられた。
「んと…そうですね。家の片付けをしようかなと思ってるんですけど」