第8章 信じる事
ライアが消えたのを確認すると、はすぐにダンテを振り返った。
「傷、大丈夫ですか? こんなに血が…」
泣きそうな顔で、血がついた頬に手を添える。
ダンテはその手の上に、自分の手を添えた。
ここにいてくれた。
怖がってもおかしくないのに、こんなに心配してくれている。
ごめんな、。ありがとな。
愛してる。
「………」
「すぐお医者さん呼ばないと…病院…」
必死に辺りを見回す。
ダンテに触れる手は震えている。
普通の人間ならば気を失っているような怪我だ。恐くてたまらないのだろう。
しかしダンテは、無言での腕を引いた。
血がつくのも構わずに抱きしめる。
強く、強く。
「こんなの何でもねえ。……行っちまったら…どうしようかと思った……」
切実なダンテの声。
その声はかすれ、まるで泣いているよう。
「…私、ダンテが人間じゃなくてもダンテを信じてます」
今までの優しさは偽りではなかったと思えるから。
「…愛してる」
「好き」なんかでは到底物足りないこの気持ち。
「愛してる」でも足りないくらい、愛している。
は涙を浮かべた顔でふふっと笑った。
「知ってます。私も、ダンテを愛していますから」
ああ
相手を信じ信じられる事は、なんて幸せな事なんだろう。
はまだここにいる。
側に、手の届くところにいてくれている。
ダンテはじっとを抱きしめていた。