第1章 終わらない帰り道
「いや! ありえないでしょ!」
あまりの非現実さに、一人突っ込む。
ありえなくしてほしかった。この状況を。
道路に人が一人もいない上にこんなに寂れた建物では、恐怖と不安を誘うだけ。
もしかして、ここには誰もいないのだろうか。
だから人もいないし、嫌な感じがするんだ。
身体が震えてくるんだ。
───も、戻る!
落ちてきた上を見上げたは凍りついた。
階段か何かあるのかと思っていた。
出て来たのなら戻れると確信していた。
しかし、視線の先には薄暗い曇天と建物が広がるばかりで、が落ちてこれるような場所も、隙間もない。
信じられなかった。
「うそ…何でよ…」
落ちた衝撃はそれほどのものではなかったので、は立ち上がった。
いや、それほどのものでも立ち上がっただろう。今のに、痛みを感じる余裕などない。
辺りを見回してみる。
「…どうしよ」
右も左もわからない、知らない土地。進みようがなかった。
ジャリッ……
「!!」
不意に後ろで微かな音がして、は弾かれたように振り返った。
───人!?
このどうしようもない状況を打破してくれる、希望の綱。しかし振り返って後悔した。
人ではない異形のモノが4つ、低い唸り声を上げていた。
鎌のようなものを手に持ち、明らかにを狙っている。
「───っ!」
見た事のない生き物。
生き物なのかどうかもわからない。
驚きであとずさる。
気味の悪い姿に戦慄する。
怖い。
怖い!
体が震えた。
逃げ出したいと願いながらも、地に縫い止められたように足が動かない。
のどがひりつく。
怖い!!
恐怖に耐えきれなかった。
震えた身体はただか細い息を漏らすのみ。
心臓が大きな鼓動を繰り返し、身体が揺れるような錯覚。
───誰か助けて…!
気付けば、は力いっぱい叫んでいた。