第7章 迎え
そうだ。ここはダンテとバージルの家。
居候させてもらう代わりに、家事を任されたんだ。
───家事……?
何か忘れているような。
悪魔に襲われて助けられて。
報酬。買ってもらった洋服。
家事をするという約束。
…約束?
───ヤバイ!
思い当たったは一瞬で目が覚め、がばっと跳ね起きた。
そうだ。
赤の他人である私を助けてくれた上に住まわせてもらう報酬として、家事を任されたのだった。
まるで釣り合わないような報酬。
の方は命を救われたのに。
───朝食! 朝食作らなきゃ!
あの二人はもう起きてしまっただろうか。
急いで服を着ると、キッチンに急ぐ。
慌ててキッチンに駆け込むと、そこにはもうすでにバージルがいた。
テーブルには3人分のサラダとパンとスクランブル。作り終えられた朝食が目に入る。
───遅かった…
初日だったというのに、寝坊してしまった。最悪だ。
は脱力する。
「昨夜は眠れたか」
がっくりするを見て、バージルがコーヒーを飲みながら言った。
その表情は、少しおかしそうに緩められている。
「あ、はい…おかげさまで。ていうかおはようございます。ていうか朝食…すみません……」
早速仕事を失敗して、落ち込む。
しかしバージルは気にしていないと言うように言った。
「昨日の今日で疲れていたのだろう。俺はもともと朝が早い。……それに、いくら頼んだからといって、まさか家事の全てをに任せるわけにもいくまい。俺だって朝食くらい作る」
「でも私は、これくらいしかできないから…」
申し訳なさそうにうつむく。
バージルは少し考えて言った。
「それほど気になるなら、ひとつ仕事を頼みたい」
はそれにぱっと顔を上げた。
「何ですか? 何でも言ってください!」
「ダンテを起こして来てくれないか」
「……え… ダンテ、まだ寝て……?」
「あぁ。あいつはいつも昼近くに目を覚ます。たまには早く起こしてやれ」
バージルのちょっとした嫌がらせだろうか。横顔からではうまく表情がつかめないが、おそらくそうだ。
はくすっと笑った。
「わかりました。じゃあ行って来ます!」