第5章 風呂場の愛
そのまま頭のバスタオルをわしっと掴むと、いきなり両手でわしゃわしゃと掻き乱した。
「わ…っぷ! な 何ですか!」
「濡れたままだと風邪をひく」
それを聞いて、は大人しくされるがままになった。
大きな手が、頭を優しくなでる。
バージルは味わった事のない幸福感に、内心戸惑っていた。
うつむいたの顔が恥ずかしそうに染まっていて、無意識のうちに頬が緩む。
このまま、時が止まればいいのに…
だが。
「あー! バージルてめえに何してんだよ!」
話し声を聞いたのか、ダンテが来た。
バージルはため息をついて、の頭に片手を置く。
「の頭が濡れていたからふいてやっただけだ。いちいち騒ぐな」
「いつまでに触ってんだよ! 俺がやる!」
ダンテはの肩を掴み引き寄せると腕の中に抱き、バージルを睨みつけた。
「、バージルに変な事されなかったか? 大丈夫か?」
「さ、されてませんよ! 何言ってるんですか!」
「そうだ。お前じゃあるまいし」
呆れたようにそう言い残し、バージルはドアの向こうへ消えた。
ダンテとはドアの外側に取り残される。
「…あー… ぜってぇ怪しい…」
ダンテは呟くように言うと、腕の中のをぎゅっと抱き締めた。
「な…なんですか!? ダンテまで濡れちゃ…」
「俺さあ、こうしてると落ち着くんだ」
本当は「幸せになる」、だが。
それを言うと、意味が重くなる気がして。
が嫌がったら、と思うと言えなかった。