第1章 終わらない帰り道
ガサガサと草が鳴る。
まるで歓迎するように。
まるで警告するように。
に容赦なくまとわりついて、しかし彼女はそれを容易に払い進む。
道は舗装してあったが、長い間ほったらかしにされていたようで、コンクリートのあちこちにヒビが入っていた。
本当に人が通った気配はなく、ちゃんとした道を回って反対側に出ればよかったかとは少し後悔する。
「んぅー…狭いぃ…」
カバンを前に抱きかかえ、横歩きで移動する。
まるで、学校への近道を行く小学生の気分だった。
わくわくするような気分。
不安を知らず失敗を恐れない心。
後ろは全く振り返らなかった。
振り返る行為自体を忘れたように、は前だけを見て進んだ。
次第に光が近づいてくる。
向こう側から緩やかにを照らす。
こんなに光が溢れているのに、どうしてすぐこれに気付かなかったのだろう。
大きなライトでも向けられている気分だ。
「明るい…」
むしろまぶしかった。
少しの間そうして歩いて、ようやく道の終わりが見えた。
広い所に出られそうだ。
草がついた足を少し払い、光へ足を踏み入れる。
そこには地面があると信じて疑わなかった。
そして見慣れない風景と建物が並んでいるのだと。
今まで知らなかったお店でも見つけられるだろうか。
買い物しようかな。今日、お金いくら持って来てたっけ。
そんなのんきな事を考えていた。
───が。
すかっ
「え…」
踏み出した足は空を切る。
───地面、ない…
呆然とするも考える暇は与えられずに体は傾き、はまっさかさまに光のなかに落ちた。
「えええぇ────!!!」