第4章 夕食
しばらくして、が材料を切っている時。
「つ…っ」
が小さくうめいた。
「どうした?」
ダンテは立ち上がる。
するとはダンテを振り返って、急いで言った。
「あ 大丈夫です。ちょっと指切っちゃっただけだから」
人差し指を舌先でちろりと舐め、思い切って口に入れる。
「見せてみな」
ダンテはの側まで行き、怪我を見た。
人差し指の先に切り傷。それほど傷は深くないように見えるが、赤い血がじわじわと溢れてくる。
ダンテはその様子を見つめてしばし黙り込むと、おもむろにの指を口に含んだ。
「!!?! なっ…!」
思いもしなかった行動に仰天したが固まる。
ダンテはの指を一旦口から出すとにやりと笑い、を見た。
「傷は舐めた方がいいだろ? が舐めるより俺が舐めた方が、治りが速いかもしんねぇ」
そんなわけのわからない事を言って再び指を口に含むと、今度は舌先で傷口をそっと舐めた。
口の中に血の味が広がる。
「ぁ…っ」
小さな肩がびくっとし、小さく声を上げる。
指に舌が絡まり、舐めあげてきて、悪寒に似た感覚がを襲った。
まともに見られない。
しかし、わざとなのか時折ちらりと見える舌からは目が離せずに。
ぎゅっと目を閉じても、舐められる音と生暖かい感触だけが頭の中を支配していて、逆に困ってやはり目を開けた。
ダンテはその様子を、ずっと見ていた。心臓が次へ次へとせきたてる。
舌に唾液をたっぷりとからめて消毒がてらぐるりと舐め上げ、次いで指を吸うと、小さく音がした。
「ゃ…ダンテ……も いい…」
「の血…鉄の味だな」
「当たり前ですっ! ありがと…もう、いいから…」
いいからやめて、と。
しかしダンテは。
───やべ 止まんね…
血の味に酔ったようにくらくらする。
人差し指の先から指の着け根に。中指に。手のひらに。手首に。
舌を這わせる。