第3章 洋服を買いに
ダンテは受話器を持ったまましばらく立ちつくしていた。
ダンテの持つ受話器に耳をくっつけての声を聞いていたバージルも、黙って立ちつくしている。
やがてダンテは、もうとっくに切れている電話をやっと置いた。
「……泣いてたな」
「あぁ。泣いていた」
「………」
「………」
「………それ買ってさっさと帰るぞ」
「あぁ」
さっきまで永遠に続くかのような言い争いをしていた二人が、電話を終えた途端物凄い勢いで買い物を終え、店を出た。
脳裏には見送ってくれた時のの笑顔。
耳に残るのは、泣いていたのを我慢し、圧し殺した声。
どんな気持ちで俺達を見送った?
ついさっき落ちてきたばかりで、落ちた所は全く知らない所で、しかも着いた途端悪魔に襲われ。
何よりも今、誰かに側にいて欲しいはずなのに。
それなのに彼女は笑って。
自分たちはそれに気づかず浮かれてショッピングに出掛け。
二人が急いで帰ったのは言うまでもない。
服は崩れないように細心の注意を払い、それでも一瞬でも早くの顔を見ようと。
走る。
家が近づく。
いつもなら二人出れば空っぽになるのに、今日から一人、残って帰りを待ってくれる家。