第23章 帰依
「決まりだな。俺は行くぜ」
「貴様。便利屋はどうする」
「悪魔なんて倒す奴いくらでもいるだろ。あんたがくだらない事した時に会った嬢ちゃんとかな」
「あの家は」
「放っておけばホームレスの集合場所だ」
「荷物は」
「武器とがいりゃいい。あんただってどうせついて来るんだろ」
「無論だ」
バージルは答えながら、妙にすっきりした表情をしているダンテを見る。
突然の究極の選択だというのに、こいつの迷いのなさは何だ。
心配するこちらがおかしいのか。
空が明けていく。
照らされて影が延びる。
指輪は一層輝き始め、カウントダウンを始めていた。
「丁度いい。私はこちらに残る」
ライアが言う。
家を追い出されたのだ。どうせ彼らの前からは消えなくてはならない。
「世話になった。様にお礼を言っておいてくれ」
ライアが離れていく。
指輪が輝いていく。
太陽は昇り。
雲は凪ぎ払われ。
風は突風になり。
ざわめきは騒がしくせめぎ合って。
ダンテは遠ざかるライアを見つめる。
本当であれば、ライアにとって自分は憎くて仕方ない存在。魔術で消されていてもおかしくない。
指輪の真実を伝えた時も、それ以上言わなければよかったのに。
と元の世界に戻ったら確実にダンテは彼女と結ばれるのだとわかっているのに。
けじめかもな。
自分の想いに対しての。
ダンテはバージルを見る。
バージルは全てをわかっていて、仕方ないという顔をした。
笑う。
「おい!」
ライアに叫ぶと、不思議そうに立ち止まった。
彼らが行くまで見送るつもりなのか、離れた所でじっと見ている。
真っ白く光る水平線。
まだ太陽は出てきていない。あと少しだけ大丈夫。
ダンテは駆け出した。
「何をして…」
驚くライアの首根っこを掴む。
抵抗されれば時間を食い自分も終わりだ。有無を言わさず叫びに耳も貸さず、問答無用で引き摺る。
半径5メートル。