第21章 手招き
つんと鼻の奥に痛み。涙がこぼれて仕方ない。
流れる雫を手の甲でこすると、ふっと目の前に影が落ちた。
見上げればライアが身体を起こしていて。その顔は、なぜか険しくて。
苦々しくて。
「…ライア…?」
生きているのに、なぜ。
なぜそんな苦しそうな表情をしているの?
の目の前で彼は、まるで独り呟くように。
「生きているのか…」
かすれた声でそう言い、自分の手を見つめた。
「おい。ライア」
声に、とライアは振り返る。
多少力が戻って来たのだろうか。ダンテが肘で身体を支えながら、上体を起こしていた。
それでもまだ辛そう。不安定にぐらりと揺れ、地面に手をつく。
は慌てて駆け寄り、支える。
バージルは何を考えているのか、空を見つめたまま。
「こんな状態じゃなきゃお前ぶん殴ってたところだけどな。自分のした事がわかってんのか」
「………」
「何があったかは聞かねぇ。問題はただ一つだ。仮にもてめえでを守ると言っておいて、なんで死のうとした」
「………」
ライアは身体を起こしたまま、静かにダンテを見つめていた。
その表情は変わらず無に等しく、は少し悲しくなる。
前はあんなに表情が豊かだったのだ。怒ったり、呆れたり、微笑んだり。
その面影が今はなくて、変わってしまったような錯覚を抱かせる。
ライアはしばしダンテを見つめて動かなかった。
無表情ながらもその瞳は、悲観しているようにも後悔しているようにも反抗しているようにも見えた。
やがて静かに。
うつむいて。
「……申し訳ない」