第21章 手招き
声に、ぱっとが顔を離した。ダンテは舌打ちする。
あと1センチだったのに。
「バージル…目、覚めた?」
「ああ」
自分から離れてバージルのもとへ行ってしまう。
身体が自由に動かせたなら、ダンテはバージルをマッハで殴り飛ばしていただろう。
いいとこで邪魔しやがって…ずっと起きてたんじゃねーのかこいつ。
まるでいつもと同じ表情の彼を睨む。
「バージルもまだ無理しないで。身体動かせないでしょ?」
心配そうにするを無言で見つめ、儚げな雰囲気を出すバージル。
はそれにたまりかねて彼の手を取った。
「…暖かいな」
「バージルが冷たいんだって。氷みたい…」
次第に泣きそうな顔。
既に泣いたような跡があったが、更に涙がたまっていく。
バージルはの手を握り返した。
「そんなに心配するな。見た目ほどひどくはない」
「でも…」
「大丈夫だ。これくらいでは到底死なん」
薄く微笑まれ、もようやく頬を緩める。
生きている。それで十分。
あとは…
「……ライアは…」
振り返り、黒い闇を見つめる。顔色は白く、闇に包まれて更に白く。
恐る恐るは彼に近づく。やや横向きに倒れている身体は、ぴくりとも動かない。
胸だけがほんのわずかに呼吸で上下しているだけだ。
ライアは目を覚ましてくれるのだろうか。少しだけ不安になる。
ダンテとバージルを信じていないわけではないが、それでも、あの闇がライアを貫いた光景を見たのでは。
隣に跪いて見守る。無意識に手を伸ばすと、左手の指輪が目に入った。
その手でライアの頬に触れ。
するりと滑らかな肌を擦る。
「?」
姿が見えなくて不安になったのか、ダンテの声。
「ん」
声に誘われるようには立ち上がる。手が優しく滑り離れ、指先がライアの黒髪をかすめた。
その瞬間。