第21章 手招き
は黙り込んだ。
ダンテとバージルの状態と辺りに飛び散った血痕、更にライアを見れば、二人が彼に何をしたのかだいたい想像はつく。
血を。
血を、捧げたのだという事くらいはわかる。
「………」
冷たい冷たいダンテの身体。いつもあちこち飛び回る身軽な姿からは全く想像もつかない大人しさ。
さっきからまるで動こうとしない。
呼吸も浅い。
瞳すら今にも閉じてしまいそうで。
不意にぺち、と音がして、一拍後にダンテの頬に僅かな痛み。
「……?」
何だと思い、ぼんやりとしていた焦点をに合わせた途端。
ぱたり
雫が落ちて、ダンテの頬を滑った。
「……馬鹿…」
が顔を歪めている。
こみあげる気持ちが雫に変わり、重力に従い落ちていく。
「馬鹿……ダンテまで目覚めなかったら、どうしようかと…っ」
「………」
かすれていく声。
ダンテは目を見開いた。
「よかった…」
は歪む表情を無理矢理笑みに変える。
生きていてくれて。
目を覚ましてくれて。
本当に。
本当に。
本当に。
「…ごめんな…」
ダンテは優しく言った。
の手を取り唇に滑らせて、生きていてよかったと柄にもなく神に感謝。
下手をすれば、このぬくもりに触れられなくなってしまうところだったのだ。を置いていってしまうところだった。
考えれば考える程今が奇跡に思えてきて。ダンテはの頬に手を伸ばし、添える。
嗚咽を殺す。不謹慎にも愛しいと思う感情。
ゆっくりとに顔を近づけるよう誘導する。
「何…」
されるがままになっていただったが、やがて気づいて。
ダンテに覆い被さるように顔を近づけ、導かれるままに唇を重ねようと。
した瞬間。
「おい」